image

コレクターズ・ノート

下記の項目をクリックするとジャンプします

1. 「バックスタンプ」ってなに?
2. バックスタンプの例
3. 「貫入」ってなに? スージー・クーパーはアンティークなの?
4. 「ボーンチャイナ」ってなに?
5. 特徴的なかたち
6. セットの内容
7. ポットのサイズ NEW


1.「バックスタンプ」ってなに?

 食器の裏には通常、製造メーカーのマークやサインが書かれています。これはバックスタンプと呼ばれており、スージー・クーパーの食器にも特徴的なスタンプが押されています。ここではスージー・クーパークーパーの代表的なバックスタンプについて紹介します。
 最初はグレイ社時代から。スージーは1922年から29年までグレイ社に在籍していました。グレイ社ではスージークーパーはひとりのデザイナーにすぎず、他にもデザイナーがいましたから、どの作品が彼女のものか?という疑問が出てきます。「デザイナーレーベル」の流行で1927年頃から下の一覧の上から3番目にあるマークが急に多く使われるようになり、これにはスージーのデザインであることが明記してありますが、実はスージーがデザインしたすべての作品にこれが押されたとは限らないのです。1番目や4番目が押されている物が沢山あります。つまりスージーのデザインであってもバックスタンプが違い、これが混乱を招く原因となっています。当時スージーはグレイ社のデザイナーの一人でしかなかったので当然と言えばそれまでかもしれませんが、グレイ社においてははこれに関してはっきりした決まりがなかったと思われます。当時の作品のデザインを集めたグレイ社のパターンブックは現存していないことから、間違いなくスージーのデザインであると断定できるのは、ちゃんと「DESIGNED BY SUSIE COOPER」と明記してあるものに限られてしまうかもしれません。その他の方法としては、「ブック」のコーナーに紹介した本が参考になります。不明な場合はどうするか?ですが、一般的に言われている傾向として、フラワー柄の場合は食器の一部や部分的にペイントしてある物はスージーのデザインである可能性が非常に高いと思われます。一方、全体的にペイントしてある物は、例外はありますが違うデザイナーの場合が多いようです。他の参考としてはバックスタンプの横に手書きの数字がある作品があります。これはパターンナンバーと言われているもので、作品のプロファイルを知る手がかりになることがあります。良く知られているスージーの最初のコマーシャルデザインはNo.2866で、これ以降が彼女のデザインの可能性があるということですが、実際には3000番代はなく、4000〜6000番台はラスターウェアの一部のみに使われています。7000番台になってスージーのデザインが急増しています。そして彼女は1929年10月にグレイ社を辞めますが、このとき8600位(諸説あり)までパターンナンバーは進んでいたようです。したがってこれより多い数字があるパターンはスージーではない可能性が高いと一般的には言われています。しかし在籍中にデザインしたものもある筈ですし、8000番台の後半まではスージーのデザインの可能性は充分あるのではないかと個人的には思います。また、グレイ社の食器で、パターンナンバーの前にアルファベットがある物がありますが(実際にはほとんど”A”です。)、これはスージーがグレイ社を辞めた後の1930年ころから使われだしたものですから、”A”が最初についているナンバーの作品(例えばA8261)はスージーのデザインではないと思われます。ただし、”A”がついていても番号のごく若いものはスージーがまだ在籍中にデザインしたものの可能性があります。時折、オークションなどで、最初に”A”がついているナンバーの製品を「スージークーパーがデザインした・・・」といって売っていることがありますが、その確証はないので注意して下さい。
 また在籍中にデザインされ、辞めた後にも復刻版として違うナンバーが当てられて発売されたものもありますが、数としてはごくわずかです。更に、スージーのパターンが後のデザイナーに影響を与えていることもあるでしょうし、実際は判断に迷うことも多いですね。結局のところ「DESIGNED BY SUSIE COOPER」の文字もナンバーもない作品は本に紹介されているものを除き、スージーの作品だと断定するのは困難ということになるでしょう。
 独立後の1930年以降は色々とマークのバリエーションはありますが、基本的にSusie Cooperの文字がありますからすぐに分かると思います。ただし、独立直後の三角形のゴム印は消えやすく、ほとんど見えないものもあるので注意が必要です。でもこのマークもほんの2年ほどしか使われていませんから大きな混乱はないと思います。1930〜40年代の製品には時にスタンプの押されていないものもあります。
 スージークーパーのフェイク(偽物)は現在のところあまり心配は要らないと思います。しかし先日、スージーのフェイクが出回りだした(それもハンドペイント!)という情報も入っており、今後は注意する必要が出てくるかもしれません。アンティークとしての価値が上がるほどこのような問題が出てくるのは困ったことです。


2.いくつかのバックスタンプ

backstamp グレイ社時代の1921年〜31年に使われました。「DESIGNED BY SUSIE COOPER」の文字は見られません。写真のように、スタンプの上や下にパターンネーム(たとえばHarmonyやSummertimeなど)が押されているものもありますが,、それらはわずかです。
1923−28年。グレイ社時代のグロリアラスターにだけ使われたスタンプ。黒のものもあります。グロリアラスターの作品では、「モノグラム」といって、特に意味のない記号のような文字が一緒に書かれている作品が多くあります。
backstamp グレイ社時代。1926〜31年。この蒸気船のマークは「DESIGNED BY SUSIE COOPER」の文字と共に、スージーがデザインした作品に多く使われました。実際は1923年頃から使われていたようですが、最初は「DESIGNED BY SUSIE COOPER」の文字は入っていませんでした。パターンネームが入っているものなど、いくつかのバリエーションがあります。
backstamp 1931〜61年。1931年にはすでにスージーはグレイ社を辞めていますが、在籍中にデザインされ、31年以後も売られた作品に関してはこのバックスタンプが押されているケースが多いようです。間違いなくスージーのデザインである作品でもこのマークが使われているものが沢山あります。これが混乱を招いているひとつの原因です。
1930〜61年。左のスタンプのようにロゴの下の文字が、MADE IN STOKE-ON-TRENTの代わりにHANLEY ENGLANDとあるものはさらに早い時期に作られたもので、上のものよりスージーの作品である可能性が高いと思います。
1930−32年。独立直後の三角形のバックスタンプで、大変珍しいものです。下のTunstall Englandの文字に注目してください。三角の下にBurslem Englandとある同様のスタンプよりさらに古いものです。
backstamp 独立後のクラウンワークス社時代。1932〜64年。パターンナンバーを書き込む長方形のリーザーブボックスがあるタイプ。ボックスがないものも多く見られます。なお、独立直後の1930年から1932年までは三角形の中にSusie Cooper Productionの文字が入ったゴム印が使われました。ただしこれは消えやすく、わかりやすい実物がなかったので、ここには載せませんでした。
1934〜1964年。30年代の製品によく使われています。カップなどの小物やプレートにも。
backstamp 独立後のクラウンワークス社時代。1932〜64年。
筆記体でSusie Cooperとサインが入ったタイプ。このサインだけの物もたくさんあり。
サインだけのものはカップなどの小物に使われていることが多いです。
backstamp 独立後のクラウンワークス社時代。1932〜64年。
最も有名な鹿の絵が描かれたバックスタンプ。
これにもリザーブボックスがあるものなどいくつかのバリエーションがあります。
ソーサーなど比較的大きなアイテムに押されていることが多いようです。
上の色違い、ブルーのバックスタンプ。

4.「貫入」ってなに? スージー・クーパーはアンティークなの?  

 およそ60年もの間、デザイン活動を続けたスージー・クーパーですが、最も人気があるのは1930年代の作品で、それらは「陶器」です。陶器には「貫入かんにゅう」がしばしば見られます。陶器は釉薬(うわぐすり、ゆうやく)を塗ってから窯に入れられ焼かれますが、この釉薬がヒビ状になっていることを貫入といいます。英語ではCrazingとかCrazeといいます。これは素地(陶器本体)と釉薬との収縮・膨張差によって発生する現象で、釉薬の収縮・膨張が素地のそれよりも10%以上大きい時に発生します。また釉薬の組成や焼成時の窯の状態、窯の中での位置(窯内の温度差)も関係しています。当時の技術では貫入を完全に防止することは出来なかったのですが、現代では釉薬の組成を改善したり焼きの技術が向上したこともあって、目に見えるような貫入を防止することが可能になっています。また理論的に磁器にも貫入はできますが、陶器のような貫入は多くありません。これは簡単に言うと素地と釉薬の組成が似ているためです。
 貫入は陶器本体のヒビではありませんから、これが原因で水分がポタポタと漏れることはありません。確かに見た目は悪い(一応このように書いておきます)のですが使用には問題ありません。ただし、紅茶やコーヒーなどを入れるカップやポットなどでは次第に貫入に染みて見苦しくなります。そのためこれら染みやすいアイテムを購入する場合、使用することが前提ならば、貫入があるものは避けた方が無難だと思います。染みる(ステイン)ことが気にならない方は普通に使用されて構わないと思います。
 貫入は熱い飲み物を入れることで発生するものではありません。「スージーのカップ等は使用していると、必ずいつかは貫入が出来る」という話が一部ではあるようですが、、これは正しくありません。貫入は製造時に出来るものです。大事なことは、実は陶器の素地と釉薬の組成には収縮・膨張率に結構な違いがあり、陶器には目に見えない貫入が存在していることがあるということです。全く貫入がない(と思っていた)スージーの陶器のカップでお茶を飲んだら貫入が入ってしまった!という話は、実は最初から存在していた貫入が見えてきたのです。非常に薄い(浅い)貫入は光を当てても見えないことがあり、お茶(水)を入れることで水分が染みて目に見えるようになって、あたかも貫入が今出来たと錯覚することがあります。また水分(お茶)はいきなり貫入全部に染みるわけではなくて、水分に触れている時間が長いほど染みますから、頻繁に使えば当然染みる範囲が多くなって貫入がまるで成長したかのように錯覚することもあるでしょう。特にカップの内側はその形の性質上、いろんな角度から光を当てて見ることができないのでその可能性がお皿より高いと考えます。貫入があるお皿などをお持ちの方は、いろんな角度から見てみると、光の入り具合で貫入があたかも消えたり、出たりすることがお分かり頂けると思います。ですから見た目には貫入がない完品と言われているスージーの陶器は、使っても全く貫入がない(貫入に染みない)ものと、残念ながら見えていなかった貫入に水分等が染みてわかるようになるものがあることを認識する必要があると思います。特にスージークーパーの食器はその性格上、全く使われないままに(何十年前のものであっても!)海外から私たちの手元にやって来るものが少なくありません。したがって私たちが初めて使うことで、見えていなかった貫入が現れてくることがあるのです。さらに貫入にも色々程度があります。すぐに染みたり、全く大丈夫だったりするわけで、このあたりが難しいところです。”本当に”貫入がない(見えてこない)カップはどんなに使おうが貫入が「発生」したり、ましてや貫入だらけになることなどありません。毎日熱い紅茶を入れてもです。
 貫入があるものでも通常はそれに染みることはありますが、貫入そのものがひどくなることはないのです。ただし特殊な条件下では貫入が悪化する可能性を否定できません。例えば冷蔵庫に入れてすごく冷えた状態のカップにぐつぐつした熱湯を直接注いだりすることですが、これは何もスージー・クーパーの陶器だけに悪影響があるのではなく、現代の陶器にも同様に良くないことです。
 また「貫入は時が経つと自然に発生するもの」と一部で書かれたり信じられていますがそんなことはありません。特にeBayオークションなど海外のセラーの文にconsistent age crazing (その年代相応の貫入・・つまり何もしなくても時間と共にひどくなるという認識)、crazing due to age or aging(年代による貫入)とかいう文が目立ちますが、非常に昔のアンティーク(たとえば200年前とか)ならともかく、一般的には間違った認識です。スージーが生まれ活躍した英国の人間が言っているのだから本当だと思うのは短絡的です(^_^)。これは時として彼らの言い訳の材料としても使われますから注意してください。例えば、貫入なし、または軽度の貫入という説明で海外のセラーから買ったとします。届いて開けてみたらすごい貫入!話が違う。慌てて連絡します。そうすると帰ってくる答えは・・「貫入は自然にひどくなるんだよ、知らないの?」とか「ああ、輸送中に出来たんですね」、「湿気や温度の変化で貫入が出来るんだよ」、「何年前の製品だと思っているんだい?こうなるのが普通だよ」・・・これらは全て「言い訳」となるわけです。彼らは趣味というより、ビジネスでやっています。自分を正当化することに長けていますし、自分に都合が悪いことには決して言及しません。我々日本人とは考え方がまるで違うのです。ちなみに彼らが言う「パーフェクト」は貫入のある、なしは関係ありません。全体的にびっしり貫入があっても、クラック(陶器本体のひび)等のダメージがなければ「パーフェクトコンディション」という人が普通です。クラックや完全な割れをリペアしたことを隠して平気で売る人も実に多いです。アンティーク陶磁器のレストアは欧米ではごく一般的です。英国の(英国人とは限らない)プロのレストアは非常に精巧で本当によく見ないとわからないものも多いです(よく見ても全くわからないものもあります)。レストアしてあっても、レストアされたものと言う人はほとんどいないでしょう。なぜならレストアがされていることが相手にわかれば一般的に売値が下がります。売り値が仕入れ値よりも下がる訳にはいかないのです。売ったあとでレストアが判明しても、自分は知らなかった、で通ります。だから売るときは、レストアされていることを知っていても絶対に言わないのが普通です。
 さて、日本では「貫入」と「にゅう」という言葉がスージーのコレクター(セラーも)にだけ?混同されて使われている印象がありますが、この2つの言葉は意味が違います。貫入は上に書いたように製造工程でできる釉薬のひびですが、「にゅう」は陶器本体のクラック(ひび)のことでダメージを意味します。たまにヤフーオークションのセラーの方の説明に「にゅうがあります」、と書いてある場合がありますが、こんなときは「貫入」のことを言っているのか、本当の「クラック」なのか確かめてください。また全体に貫入があるものを購入するときは注意が必要です。というのは貫入に見えるものにクラック(にゅう)が混じっていることがあるからです。内側と外側の線が一致している時はその可能性が高いと思います。クラックであれば飲み物を入れれば漏れることがあります。ちなみに一般的にはクラックのことを「ヘアライン」とか「ヘアラインクラック」といいます。ヘアラインはカップなら飲み口のエッジ部分から足のほうへ入っていることが多いようです。ソーサーもエッジから中心に向かって入っていることが多いです。当然内側の線と外側の線は一致しています。クラック(にゅう)はぶつけたりした衝撃で出来るのものですから、貫入と違って次第に進むものも多く、使用しないほうが賢明です。この状態で使用しているといつかは割れてしまいます。カップの場合は熱い飲み物が入っている時に割れるとあぶないので、出来ることなら使わないほうがいいと思います。
 貫入にも程度に差があります。浅いものや深いもの、まれに陶器本体の素地までいってしまっている(これはクラックなのですが)ものがあり、見ただけでは区別がつかないようなものも実際あるのです。貫入があっても全然染みにならない物や、少し深い貫入だと思って使っていたら実はクラックで、最後には割れてしまったという例があります。和物の陶器(一部の磁器も)では貫入はひとつの特徴として扱われていて、貫入に染みるのも”味”とされることが多いようです。和物では貫入に染みることを防ぐために、使用前に水やぬるま湯につけることがすすめられていますが、スージーの陶器にももちろん効果はあるでしょう。
 ボーンチャイナには一般的に貫入がない印象がありますが、1950年以降に作られたスージーのボーンチャイナも貫入が入っているものが結構あるようです。入っていた場合、目に見えないことも多く、かえって陶器よりも判別がつかないこともあります。でもそれはスージーの作品だけではなくて、たとえば1900年くらいのある有名メーカーのボーンチャイナなどはごくあたりまえ?のように貫入があります。見た目は貫入がなくても、指ではじくと濁った音しかしません。見た目は完品でも使えば貫入にびっしりと染みます。これらは焼きが甘いものに多く、スージーの場合は比較的めずらしいパターンに多いようです(これは焼成時の窯内での位置などが関係しています)。でも日常的に使うならボーンチャイナが向いているという意見は否定しません。陶器より扱いが楽でしょうし、スージーのボーンチャイナはまだ手頃な価格で買えるものも多いからです。ただ、スージーのボーンチャイナは日常的に使われていたものが多いので、スクラッチ(ナイフ傷)などが目立つことが多いのは困ったことです。
 話は変わりますが、実は貫入をこれほど気にするのは日本のスージーファンだけのようです。スージーの甘いデザインが日本の女性の心をつかみ(私のように男性もいますが)、食器なんだから実際に使いたい、でもこの表面のひび割れみたいのは何?というところから、「貫入」という言葉がファンに浸透して一人歩き?し、色んな認識が語られるようになったのではと推測されます。でも当時は貫入を完全に防止することは難しく、陶器の「特徴」のひとつでした。ですから、スージー以外のアンティーク陶器に関しては、売買の時、それほど話題にはなりません。チップやクラック、ヘアライン等はダメージですが普通の貫入はダメージとはみなされません。貫入はあって当たり前のようなところがあるからです。ではなぜスージーの作品だけことさら貫入が気にされるのか?これは日本において特別スージーの人気が高いことが関係していると思います。過去、多くの日本のバイヤーの方々が現地買い付けの際、貫入の有無を問題にしてきたからではないかと思っています。それはとりもなおさず、私たち日本人のスージーファンが使って楽しむことを意識していることの裏返しなのです。ちなみに日本での状況を反映してか、最近では英国内のコレクターも貫入がないものを選んで集めるそうです。
 日本ではスージーの作品はアンティーク食器としてではなく、むしろ「雑貨」として広まった経緯があります。実際当時はアンティークとしてはまだ少し時代が新しかったことも原因でしょう。しかしながらその後スージー・クーパー(特に1930〜40年代とそれ以前の製品に関して)は私たち日本人が再評価し、それに続く形で英国内で「アンティーク」として価値が急上昇しためずらしいパターンで、今ではれっきとした「アンティーク」です。よく100年経たないとアンティークではない、などとと言われますが、100年経ってもその価値が評価されずにいれば、それは単なる古道具です。例えば私が趣味で陶器を焼いたとします。でもこれは100年経っても世間一般では何の価値もありません。一般的に「アンティーク」になるためには後に再評価されて、その価値(価格)が当時よりも上がることが重要なのです(スージーはいわゆる”デザイナー物”ですからアンティークなる素質はもともとあったのです)。すなわち1995年の「スージークーパーのある暮らし」(「ブック」の項を参考にしてください)という本が学研から発売されたことで一気に日本の「雑貨ファン」に広く知れ渡り、その人気(価値)が爆発的に急上昇したことがそれにあたります。そのため、日本人バイヤーが英国内でスージーを大量に買う事態となりました。その結果、英国内でもその状態を無視できなくなり、価値・価格が高騰しました。こうしてスージーは立派なアンティークになったのです。その意味ではこのムック本の功績は高いと思います。つまりスージーを「アンティーク」に押し上げたのは私たち日本人なのです。
 今ではアンティークであるスージークーパーの食器ですが、当の彼女はいつも実際に使ってもらいたくてデザインしていたと伝えられています。食器はやはり”食器”であり、本来飾る物ではないのです。本当に高価なものは別ですが、出来るだけしまい込まずに使いたいものです。それから、「スージーの食器で現在コンディションの非常にいい物は戦後に作られたもの」、という話は必ずしも正しいとは限りませんので、誤解なさらないようにしてください。1930年代に作られたものは当時の中流階級以上の人達によって大切にされ、年に数回しか使われなかったものが多いのです。全く一度も使われなかったものも珍しくありません(英国の中流階級は日本のいわゆる中流意識・階級とは違いますので注意して下さい。スージーの食器は高すぎて一般の英国庶民には手が届きませんでした)。したがって全くきれいなまま現在まで残った確率が高く、今私たちの手元にあるコンディションの良いスージー達はこのような物が多いのです。かえって1950年代以降のボーンチャイナの製品は日常的に使われることが多かったために、意外にもナイフ傷や欠け等が多いのが実状です。ボーンチャイナの製品だから、時代が新しいからきれいというわけではありません。したがって1930年代の製品よりもボーンチャイナの製品のほうがコンディションのいい物が多い、というのも一概に正しいとは言えないのです。

4.「ボーンチャイナ」ってなに?

器は原料と焼かれる温度によって陶器、磁器、ボーンチャイナに分けられます。陶器は英語でアースンウェアと呼ばれるもので、粘土を低温で焼いたものです。色は茶色っぽくて厚みがあり、見た目は温もりが感じられますが、強度はあまりなく、脆い性質を有しています。この茶色は粘土の中に含まれている鉄分が原因です。スージーの作品はグレイ社時代から1950年くらいまでほとんどすべて陶器でした。
 磁器は当初中国や日本(伊万里が有名)で作られたもので、もともとヨーロッパ原産ではありません。簡単に言うと石を粉砕して、それを粘土に混ぜて出来あがった磁土という物を焼いて作られます。高温で焼成するため硬度が高く、素地の中にガラス層が出来て透明感があります。また金属分が殆ど含まれないので、元の粘土の白いままに焼きあがります。最初中国や日本だけで天然の磁土が産出されたため、ヨーロッパでは作られることがなかったのです。だから当時は白い磁器は中国から持ち込まれ、「チャイナ」と呼ばれました。その後ヨーロッパではマイセンが最初に磁器を作り始めます。原料の土はカオリンと呼ばれますがこれは中国の磁器の原産地の地名をつけたためです。
なお陶器と磁器の中間の性質を持つ器もあります。ウェッジウッドのジャスパーウェアが代表です。表面がざらざらとしていて、使ううちにそれが取れ、光沢が出て味わい深くなる特徴があります。
 ボーンチャイナはイギリスで発明されました。イギリスは他のヨーロッパ諸国に産出されるカオリンに恵まれず、磁器の生産で遅れをとっていました。そのカオリンの足りない分を牛の骨を焼いた灰で補う技法をボウ窯のトーマス・フレイが発明したのです。1750年のことでした。そのため骨(ボーン)を使った磁器(チャイナ)ということでボーンチャイナと呼ばれるようになったのです。実際に完成させたのはスポード窯です。それから後も各メーカーが研究を重ね、柔らかい色合いとすぐれた透光性、割れにくい丈夫な性質が完成されたのです。この骨灰が50%含まれるものをファイン・ボーンチャイナと言います。スージーも後年の作品はファイン・ボーンチャイナです。

5.特徴的なかたち

1930年の独立後のポットやクリーマーなどは特徴的な形をしています。それぞれに名前がついていて、鳥の名前から付けられたものが多いようです。子どもの頃から動植物を観察していたスージーならではと言えるでしょう。またかわいい形だけではなく機能性も考えられており、注ぎ口はコーヒーや紅茶を注いだとき、ポットのおしりにたれないようになっています。
これは”ケストレル”シェイプといって、チョウゲンボウKestrelという鳥の名前から命名されています。この鳥はかわいい形をしたポットからは想像がつかないほどどう猛なハヤブサの仲間です。地上近くに滞空して獲物を探します。子どもの頃から動植物を観察していたスージーならではの命名でしょう。
グレイ社時代からポットなどのシェイプデザインを思い通りにやってみたかった彼女が独立後に初めて手がけたものです。1930年代から後に至るまで本当に色々なデザインに使われました。
image
image こちらはチョウゲンボウと同じ仲間のハヤブサFalconから命名された”ファルコン”シェイプです。ハヤブサはご存じの通り、狩りの名手で獲物を見つけると上空から急降下して襲います。そのスピードは鳥のなかで最も速いそうです!この形からハヤブサが想像できますか? image
image これは”クアイル”シェイプといって、卵でおなじみの「うずらQuail」からつけられました。
非常に注ぎ口が長いのが特徴です。1950年代以降のボーンチャイナの作品によく使われました。実際手に取ってみると非常に華奢な感じがします。カップなども取っ手が細くて結構心配(笑)。取れて?しまいそう。ボーンチャイナだからこそ、この形にできたのでしょう。
image

この他に”カールー”シェイプ、”レックス”シェイプ、”カン”シェイプなどがあります。レックスシェイプはスージー・クーパーがデザインした形ではありません。登場したのは1930年代後半ですが、Wood & Sons社で以前から扱っていた形をスージーが流用したものです。レックスとは王の意味で、よくペットの名前に付けられることから、一部ではスージーが飼っていたネコなどの名前から取ったという説があるようですが、単なる俗説みたいです。カンシェイプは50年代以降のボーンチャイナの製品によく使われました。ギャラリーのコーナーにも書きましたが、ブラックフルーツやタリスマンなどが有名です。


6.セットの内容

ティーセットやコーヒーセットにはどんなアイテムが含まれていたのでしょうか?代表的なセット物の構成を見てみましょう。最近はセットで揃えることは流通的にも価格的にも難しくなっていますが、何かの参考にしてください。

1.ティーセット(21ピース)・・・最も標準的なティーセットにはティーポットはついておらず、オプション扱いでした。当時このようなセットを購入できたのはハイクラスの人々であり、ポットは銀器を使うことが多かったからです。
    ティーカップ&ソーサー6客
    サイドプレート(5インチ)6枚
    ミルクジャグ
    シュガーボウル
    ブレッド&バタープレート1枚

2.コーヒーセット(16ピース)・・・コーヒーセットには最初からポットが付いていました。
    コーヒーカップ&ソーサー6客
    クリームジャグ(ミルクジャグ)
    シュガーボウル
    コーヒーポット

3.ブレックファストセット(29ピース)
    ブレックファストカップ&ソーサー6客(普通のティーカップよりも少し大きめです)
    サイドプレート(6インチ)6枚
    エッグカップ6個、
    スラップボウル(これは要らなくなったティーを捨てるためのボウルです。見た目は大きなシュガーボウルといった感じです)
    シュガーボウル
    ミルクジャグ
    ブレッド&バタープレート2枚

4.サンドイッチセット(7ピース)
    長方形のプレート1枚
    正方形のサイドプレート6枚

5.レモネードセット(7ピース)
    ラージジャグ
    ビーカー6客

6.フルーツセット(7ピース)
    ラージボウル
    フルーツボウル6個


7.ポットのサイズNEW

ケストレルシェイプのポットのサイズは4種類あります。ポットの底バックスタンプのある面に数字が型になっているものがありますので、参考にしてください。当時はティーフォーツー以外のサイズのポットはオプションでしたから、セットの内容や用途に応じて買い求められたはずです。下の画像で比べると、その大きさの違いがよくわかりますね。

1.いわゆるティーフォーツーサイズ(No.42) 左上
2.4−6人用 No.36 左下
3.6−8人用 No.30 右上
4.8−12人用 No.24 右下

コンテンツのページへ戻る back to contents トップページへ戻る back to top